薬丸 岳『蒼色の大地』

蒼色の大地 (単行本)

蒼色の大地 (単行本)

時は明治。海賊と海軍の戦いの背景にあるのは蒼い目を持つ「海族」と大きな耳を持つ「山族」との争いであった。幼馴染の灯と鈴と新太郎の三人。蒼い目の青鬼と蔑まれ迫害され村を出た灯は海賊となり、村を嫌い妹の鈴と共に村を出た新太郎は海軍に。そして鈴は灯を探して青鬼が多く住むという鬼仙島へ向かう。

とまあこんな感じなのですが、薬丸さんってこんなにガチガチな設定の物語を描く人でしたっけ?。というのがまず最初の驚きで、その驚きというか、悪い違和感じゃないだけどそこはかとない座り心地の悪さ・・・のようなものを抱き続けながら読み終え、そして巻末のページを捲ったらですね、なんとこれ「小説BOC」という文芸誌の創刊を記念して企画された『螺旋プロジェクト』(https://www.chuko.co.jp/boc/spiral.html)なるものの一つだそうで、そういうことならなるほど納得!(ていうか何も考えず(この方の作品は必ず買うので)購入してまだ読んでない伊坂さんの作品もこの企画のものだったのか)。

それを知ると、私が感じた座り心地の悪さみたいなものはこの企画の趣旨である「ルール」によるところなのか?とか思わなくはないけれど、それも含めて「これを薬丸さんが描かれたのかー」という視点で楽しむことができました。これ、それぞれの時代をどなたが担当するのかとかどう決めたのだろうか。

この作品単体でも結構スケール(感)の大きな物語なんですが、これ「古代から近代にかけての日本の歴史」の『一部分』でしかない・・・んですよね。全作品を通して読むと『壮大な絵織物(タペストリー)』となって互いに繋がりあう瞬間が立ち現れるそうで、そんなん言われたら全作品読むしかない・・・・・・・・・よなぁ・・・(全く知らない(正直に申し上げて興味がない)作家さんもいらっしゃるのでちょっと躊躇しちゃうんだけど、コンプリートしたい気持ちのほうが強くはある)。