福田 和代『梟の一族』

梟の一族

梟の一族

岐阜の山奥に江戸時代から続く「梟」と呼ばれる一族の里があり、ある晩何者かに襲撃を受け里は一夜にして焼け野原となってしまう。射殺された一人を除き里の住民の姿はなく、祖母に命じられるがまま風穴に逃げ込み難を逃れた里(一族)で唯一の十代である史奈は里に現れた元住人の兄妹に連れられ東京に向かうが、その兄妹は偽物であった。という始まりで、いつものことではありますが、出だしはほんっとにイイんだよな。面白そう!しかなくってぐんぐんページをめくってしまうのだけど、途中でガクンと失速する。今作もやっぱりそれで、具体的には里の住民たちの行方がわかりコンタクトが取れたあたりから一気に物語にあった神秘性にようなものがなくなり、鍾乳洞のあたりはもうただ文字を読んでるだけの状態になってました。新たな時代の扉を開くラストシーンが良かったことがせめてもの救い。


梟は「眠らない(睡眠を必要としない)」という特徴があるのですが、そのことに絡め“致死性家族性不眠症”という遺伝性のプリオン病について触れられていて、わりと最近同じ病気が鍵を握る作品を読んだばかりなのでこのネタで被るか!という驚きはありました。