辻 寛之『インソムニア』

インソムニア

インソムニア

第22回「日本ミステリー文学大賞 新人賞受賞作」です。

南ナイルランド共和国にPKO派遣された自衛隊は「駆け付け警護」の依頼を受け、女性自衛官2名を含む7名の小隊を編成し行方が分からなくなったNGOの移動診療車の捜索に向かうが、待ち伏せに遭い襲撃を受ける。それにより1名が死亡。さらに帰国後1名が自殺。メンタルケア担当の自衛官が専門医師と共に残った5人と話をするが、現地でなにがあったのか、5人の証言は食い違っていた。

自衛隊の向かった先が「アフリカ」で、隊員たちは「現地の村に滞在」し、帰国後「精神を病んだ」というところから即「これは喰ったな」と発想する私なかなかやるな!(自画自賛)。

防衛庁の日報問題が土台というか、それを小説に落とし込んだ作品と言っていいかと思いますが、前述の通り“そういう要素”がありまして、自衛隊員たちが「戦地」で体験した「戦闘」を隠蔽しようとする政府だが、隊員たちが「隠蔽」しようとしているのは“それ”なのだろう・・・ということは予想がつくんです。で、私は最後まで自分の予想に自信を持っていたわけですが(だってタイトルがズバリだし)、隊員たちが「隠蔽」しようとしたのはそれではなく自分たちが民族紛争を引き起こしてしまったことであった・・・というところまではまさか思わず、だから「死ぬまで眠れない」と最後の最後でしてやられた感。