米澤 穂信『本と鍵の季節』

本と鍵の季節 (単行本)

本と鍵の季節 (単行本)

整った顔で皮肉屋の「松倉詩門」と童顔で相談しやすい「堀川次郎」は公立高校の図書委員会に所属している。そこへ相談事が持ち込まれ、二人はその謎を解くことに・・・という連作短編集ですが、「本」のなかでも「図書館本」に因んだ謎解きがある一方で図書館どころか本すら無関係の謎解きがあったりするもんで、それこそ『古典部シリーズ』でいいのではないか?と、古典部シリーズとしても書けそうなネタをわざわざ別の作品にした理由がどこにあるのだろうかと思いながら読み進めました。

読み終わって見て解った。前半の4編は本に関係のない謎解きも含め「松倉」と「僕」という人間を描くための話で、これは謎解きというより『二人の男子高校生の物語』なのだと。古典部とはそもそものところが全く違ってた。

スカした会話を交わす「はいはいそういうタイプの男子の話ね」と思っていたものがまさかこんなところに着地するとはラストの1編に至るまで1ミリも思ってなかったし(解ってみればそれまでの物語のなかで布石らしきものはちゃんと打たれていたのに)、これを「爽やかでほんのりビター」とは私にはとても言えないよ・・・カカオ95%じゃないか・・・。


タイトルも良ければ装丁も好みだけど、特に見返しの鮮やかな黄緑色がとてもいい。