降田 天『すみれ屋敷の罪人』

すみれ屋敷の罪人 (『このミス』大賞シリーズ)

すみれ屋敷の罪人 (『このミス』大賞シリーズ)

日本推理作家協会賞・短編部門を受賞した方の受賞後1作目で、私にとっては初めての作家さんになります。

戦前の名家・紫峰家の敷地から3体の白骨化した遺体が発見され、若い刑事が今も生きている紫峰家の関係者に話を聞くが、それぞれの話には嘘や秘密があり、そして若い刑事にも事情があって・・・と、調べれば調べるほど謎は深まっていきますが、その先にある「真実」はなんとも言えず切ないものでした。どこかでなにかが違っていればこんなことにはならなかったかもしれないけれど、でも「こうなるしかなかった」のではないかとも思うわけで、それは全員の「意志」があってのことであるわけで、それが哀しい。

もっとおどろおどろしい、もしくはおぞましい、そんな物語を想像していたのですが、真実に至る流れ(情報の出し方)含めとても端正で美しい作品でした。次の作品もぜひ読みたい。