ミュージカル『ナイツ・テイル ―騎士物語―』@帝国劇場

堂本光一さんと井上芳雄さんのW主演ということで、いつもとは勝手が違う争奪戦を経てなんとかチケットを手にすることができまして、観てまいりました。
“あの”裸のキービジュアル?を見た時はどうなることかと思いましたが、いやあ・・・面白かった!。毎回いろんな感情を抱えて劇場を後にしますが、こんなにも「朗らか」な気持ちになれたのはいつ以来だろうか。

いとこで親友であるアーサイト(堂本光一)と

パラモン(井上芳雄)は、戦争で捕虜となる。

牢獄の窓から王女エミーリア(音月桂)を見た二人に恋が芽生え、

二人の友情は敵愾心に変わる。

艱難辛苦を経て再開する二人の貴公子は、

王女の愛を競い合い決闘を挑むがーーー。

このあらすじ通りの話で、「決闘を挑むが」のあとどうなるのか?ってところが肝ではあるもののまぁ・・・たいした話じゃないんですよ。だけと面白かった。とても楽しい作品でした。

なぜか。

それは二人の貴公子・アーサイトとパラモンを演じる光一くんと芳雄さんが楽しんで演じていたから。特に芳雄さんがほんっとーーーーーーーーーーーに楽しそうで、じゃれ合ったり煽り合ったりハグし合ったり決闘し合ったり、なにをしててもとにかく二人が可愛い。もっと言うとアホ可愛いw。それだけで楽しいし幸せだし、アーサイトとパラモンどちらも愛する女性と結ばれて、ついでに岸さん演じる王と人質として娶られた歌穂さん演じる王妃もいい感じになっちゃう超ハッピーエンドなんで、とにかく幸せな気持ちになれました。カーテンコールで毎回アンサンブルのなかから2名なのかな?選ばれた人がダンスを披露し、それをみんなでワイワイ盛り上げるのもカンパニーの一体感が感じられて気持ちよかったし。わたしが観た回で舞台から捌ける前、最後に光一くんと芳雄さんが二人で頭を下げるところで萌音ちゃんも一緒に下げちゃって、顔を覆って恥ずかしがる萌音ちゃんを慰める歌穂さんに対しいじる芳雄さん(笑)ってのも微笑ましかったw。


一人の女を取り合うのはそれとして、アーサイトとパラモンって立場(家庭環境)的には変わらないと思いながら観てたんだけど、共に敵国に捕虜として捕えられたもののアーサイトは保釈金を出してもらえたのにパラモンは出してもらえず一人だけ牢獄に囚われ続けるんですよね(ここが双子や兄弟ではなく従兄弟だという設定の理由なのかな?)。なぜパラモンは保釈金を払ってもらえないのか、その理由が語られることはありませんでしたが、どんな理由があるにせよそこで闇落ちしてもよさそうなもんなのに、そうはならない。アイツ(アーサイト)は出られたのに俺は檻の中・・・と恨み節っぽいことを歌いはするけど、アーサイトをそういう意味では妬んだり憎んだりはしない。そういう話にはならないところが面白い。二人が争うのはあくまでも「女を巡って」であって、それがなければ「従兄弟よ!」「従兄弟よ!」ガシッ(抱擁)なの(笑)。でも女のためなら殺し合う。なんという単純さ(笑)。

(って、今この感想を書いててふと思ったけど、ロミオとは違いアーサイトとパラモンに対してはこのちんこ脳野郎!とならなかったのは光一さんと芳雄さんだからだろうか)
(これが城田優加藤和樹だったら・・・と想像してみたら完全にこのちんこ脳共が!!だったのでw、光一さんと芳雄さんだからで間違いないと思われますw)

ひとりだけ釈放されたアーサイトは自国に戻る途中でエミーリアの誕生日を祝うために踊りの稽古をしてる集団を見かけ、これ幸いとエミーリアに近づくべく名前を偽りその集団に混じるのね。そんでちゃっかりエミーリアの部下となる。こんなことをパラモンが知ったら今度こそ闇落ち必須としか思えないのに、そういう話にはならず(それどころか森のなかでアーサイトが持ってきてくれたお弁当とお酒で宴会始めますからw)正々堂々決闘して勝敗を決めようとするのです。シーシアス(岸さん)もその部下もまとめてみんな単純すぎんだろと(笑)。

ていうか、この時点でエミーリア曰く「こっち(アーサイト)は身分を偽ってたしこっち(パラモン)に至っては見たこともない!」なのよ。お前誰だよ!?扱いのパラモンには笑うと同時に憐憫すら覚えましたがw、女の気持ちそっちのけでトロフィー扱いとか酷くねえ?ってなもんですよね。でもエミーリアもエミーリアでアーサイトのことを「顔が良いから好きになっちゃった!」とか言うんだよねw。どっちもどっちかよとw。まぁそれが堂本光一であるわけですから超納得ではありますがw。

そんでいちばん「ハア!???」なのはそれまでエミーリアのことを好きだ好きだ、俺のほうが先に視認したから俺のもんだ!(この言い分がほんとバカw)と言い張ってたパラモンが、自分を逃がしてくれた牢番の娘の気持ちを知った途端「最初から君のことが好きだった」とか言いだしたことですよw。コイツなんなの!?と思わずにはいられなかったw。

アーサイトもパラモンも、そこまで深く人間性が描かれているわけではないので心の移り変わり、動きがわからない(アーサイトとパラモンはナルキッソスのようにお互いを通して映る(見える)自分に恋をしてるんだってな感じの台詞があったんで、そこ!そこもっと掘り下げてよ!!と心の中でジタバタしたわ)。だから唐突感は否めないのだけど、まあいっか(笑)という気持ちになれる・・・というか、そう思うしかないというかw。

人間性の描写については全体的にそうで、それでも物語を理解するに十分なキャラクター性があったのは光一さんと芳雄さんを筆頭にキャストが全員嵌っていたからだと思う(見た目10歳ぐらい離れた姉妹にしか見えないので音月さんと萌音ちゃんの親友設定はちょっと無理やり感がありましたが、それぞれ単体としては嵌ってました)。歌穂さんのヒポリタなんて歌穂さんをキャスティングしておきながらまともに歌うの1曲、それも完全なるソロじゃないとかもったいないにも程がある!!!ではあったけど、歌穂さんであるというだけで伝わってくるものが確実にあったもの。

そうそう!鹿を演じた方の身体表現力が素晴らしかったのですが(森を駆ける鹿と逃げるパラモン(のシルエット)の美しさたるや!)、鹿狩りからの脱獄囚(パラモン)狩りすべくシーシアスたちが馬を駆るというシーンがあって、それが手綱を持ってパカパカするエア乗馬で、ここでドルガンチェの馬を思いだしてしまったわたしのバカー!脳内でうまっうまっ♪って歌ってしまったわたしのバカバカー!!(笑)。

基本はシンプルなセットだけど盆を回しまくってライトと小道具でもってスムーズに場面転換する演出も良かった(唯一、1つめのデカ顔演出はともかく2つめのアテネ?の演出は世界観と合ってなさすぎて好みじゃなかった)。和楽器が入ることでどことも言えない架空の時代・場所のようにも思えて、華やかというわけではないものの想像する楽しみがありました。

SHOCKのように光一さんの魅力を絞り尽くすほどのことはなく、芳雄さんの歌唱力全開というわけでもなかったんで、堂本光一井上芳雄の全力ガチンコ勝負!・・・とまではいかず、その点ではやや物足りなさはありますが(光一くんだったらもっと殺陣とダンス、芳雄さんは1曲でいいからガツンと歌い上げるソロ曲を用意するとか、そのための手法はあっただろうと思うので)、むしろ二人だけが目立つのではなくアンサンブルも含めた全キャストのバランス、まとまり、その総合力で楽しめる舞台でした。観られてよかった!。