櫛木 理宇『鵜頭川村事件』

鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

亡き妻の墓参りで鵜頭川村を訪れた岩森と幼い娘・愛子。その時50年に1度レベルの集中豪雨が発生し、がけ崩れにより村は閉ざされてしまう。閉ざされた村内で一体の惨殺死体が発見されるが、村外への通信手段は全て失われているため警察への連絡すらできない。そこで若者たちは自警団を立ち上げるが、やがてそれは村中を覆う狂気となり騒乱を引き起こす。
小説の中で50年に一度の集中豪雨と言われても、1か月前の私はそれを具体的に想像することはできなかっただろうけど、今は出来る。閉ざされた山間の閉鎖的な村で殺人事件が発生する・・・なんてもはやフォーマットと言っていいだろう設定だし、外界から閉ざされる理由が悪天候で「がけ崩れ」なんてありがちすぎるだろうと、1か月前の私ならばそう思ったことでしょうが、今は違う。集中豪雨マジ怖い。がけは崩れるし村は閉ざされる。堤防が決壊したら村だろうが街だろうが水没する。それを目の当たりにしてしまった今「ありがち」なんて言えないわ。
ていうかむしろ「村の外」の状況を想像してしまい人間同士で争ってる「村の中」の話に集中できないというか、学生運動ごっこしてるそのエネルギーを「対自然」に立ち向かうことに使えよと思うしかなく、閉ざされた村を心配し一刻も早く救助すべく駆けつけたら村民同士で争ってましたとか、自衛隊のひとの気持ちを思うとなんともいえない気持ちになりました・・・。