柚木 裕子『凶犬の眼』

凶犬の眼

凶犬の眼

孤狼の血」の続編です。
いやあ、やっぱり面白い。黒川博行さんの「面白い」という帯文に惹かれて(それだけが理由で)手に取ったらあまりの骨太さに度胆を抜かれた「孤狼の血」ですが、その面白さが凄ければすごいほどそれに続く物語が1作目を超えられないことが多いなか、これはぜんっぜん負けてない。(読者のなかでも)世界観が定まったうえで物語が展開されるので、一気に没頭できるぶん孤狼〜よりも読みやすさが増しその面白さがよりダイレクトに感じられる。
ていうか、「孤狼の血」の日岡松坂桃李のイメージって皆無だったのに、映画を経てこれを読んだらもう日岡が桃李でしか読めないことに驚きを隠せません。どの場面もどのやりとりも、全編松坂桃李が動いて喋ってるんだもん。そしてそのことに違和感なし。大上との時間があっての今の日岡なのでそういう意味では孤狼〜と凶犬〜の日岡は変化してるわけで、さらに日岡は懲罰人事で山奥の田舎の駐在に追いやられ、野心はあれど燻ってる・・・という状態なので、その鬱屈した感じが日岡松坂桃李という俳優の距離をより近くしたのかな、なんて思いながら一気読み。
主人公は日岡で主役は大上だった孤狼〜に対し今回は日岡が単独の主人公だということと、この作品で日岡がすることと言えば“待つ”ことなので、孤狼〜ほどのギラギラヒリヒリ感はないものの、誇りと意地、男気と野心のぶつかり合いは前作同様です。
そしてなんといっても警察官としての日岡をあらゆる意味で「変える」国光という男がヤクザとしてカッコいいのなんのって!!。
最後の最期まで敵対組織の幹部ですら認めるその生き様を貫き通す国光には問答無用でときめかざるを得ません!!。
これも映画化が決まっているとのことで、30代・男前の国光に誰をキャスティングするのか。このキャスティングによってはとんでもないものが生まれてしまう気がする・・・。