『ブラックペアン』最終話

患者の命を助けるために今医者を辞めるわけにはいかないと、だから帰国当時に真実を話すことはできなかったと、それはわかる。でもそれから年月が経ち「教授命令だ」で大概のことはどうにかなる立場になったわけで、渡海が自分に対し敵意を向ける理由はうすうすわかってたんだろうから、かつて話せなかった真実を「ゆえよ」って話よね。誤解であっても復讐心を糧に渡海がどこまで成長するのか見てみたかったってところまでは理解できなくはないけど、その結果殺されるのが自分(佐伯)なら構わないとしても(その覚悟があるのだとしても)恩師である一郎先生が守ってくれた飯沼に危険が及ぶ可能性は少なからずあると、渡海の自分に対する憎しみはそれほど強いと、佐伯ならそれぐらいのこと解るだろうに、もはや成長を見守ってる時期は過ぎたことをなぜ認めようとしなかったのかと。
これまでは悪魔的な技術でもってオペを成功させてきたのに、体内に残されたペアンを見てもそれにより止血がされてることもわからず引っこ抜いて大出血起こすとか最後の最後でやらかす渡海と相俟って、必要以上に(原作を読んだときに受けた印象以上に)渡海の独り相撲でしかなかった感がすごい・・・というか、もうはっきり言っちゃうとニノのルックスもあって結局渡海は思い込みを暴走させワルを気取ったアホな息子(ガキ)ってだけだったんじゃんとしか思えなくって、最後に「尊敬する医者の言葉です」とか言っちゃうのとかもう恥ずかしすぎてだな。
ていうかこれが一番「はぁーーーーーっ」って脱力するしかなかったんだけど、佐伯の処置を騒いで「医療過誤」にしたのは黒崎だったという事実ですよ。世良や花房が衝撃を受けていたように事情を全く知らずにあんなレントゲン写真見ちゃったらそら普通は騒ぐだろうとは思うわけで、だから理事長選で教授の代弁者としてその想いを伝えることができたなら視聴者感情的にプラマイゼロになっただろうに、論文掲載誌の編集長などという云わば“部外者”に役目を奪われるとか結局役立たずの無能じゃねーかと。
あとまぁスナイプだカエサルだと医療技術(そのための道具)の進歩についてこれだけ描いてきたというのに飯沼は未だにペアンを体内に残した状態でなければ止血できないとかどうも納得いかないってのはあるよね。レントゲンには映らず死後は遺体と一緒に燃える「ブラックペアン」を開発したことが“技術”ってことなのでしょうが、そんな隠蔽目的でなくペアンの代わりに止血できる器具であり方法を見つけることができなかったんですかね?と。公にできない患者なわけだからその対処法を見つけるのもまた秘密裡に行わなければならなかっただろうし、そうなると「ペアンを見つからないようにする」ことしかなかったのでしょうが、もし飯沼氏が佐伯の与り知らぬところでまた別の病気で手術を受けることになった時に「ある」ものが「ない」とされることでまた別の支障がきたすことになったりしませんかね?という疑問が残るわけで、それでもなお「ブラックペアン」でなければならない理由、その説得力がない。だから印象として盛り上がりのないダラーっとした最終回になってしまったように思う。
でも師長があれだけ必死こいて隠そうとしてた“特別室の患者”なのに高階が見つけちゃうくだりは面白かったし、いるはずのない渡海が患者になにをしようとしているかを報告しようとしてその渡海に「俺を信じろ」と言われて誤魔化すの、というか「野菜ジュース」という単語のセレクションがなかなか良かったですw。
それから高橋洋さんの出番が思いのほか多くてよかった。理事長選に敗れてその場を後にする西崎教授の背中に頭を下げる洋さんは見応えありました。
佐伯教授に留守を任された高階がやがて東城大の病院長になるように、めげずに論文だ!インパクトファクターだ!!な西崎教授の跡を継ぐであろう洋さん(役名なんだっけ?)が高階とのライバル関係含めこの先どうなるのか想像する楽しみを与えてくれたところはよかったよ。


最終回まで見届けて、やっぱりこの原作(このシリーズ)とこの演出って合ってなかったとわたしは思うのだけど、結果(数字)としては成功と言えるだろうから、これからもこの路線は続けていくのだろう。なんだかんだで楽しめるしそれ自体を否定するつもりは全くありませんが、続けていきたいのならば原作選びは慎重にしたほうがいいとは思う。