越谷 オサム『房総グランオテル』

房総グランオテル

房総グランオテル

東京から特急で1時間半の南房総・月ヶ浦にある民宿&食事処「房総グランオテル」が舞台。人のいい夫婦とその一人娘がもてなすグランオテルに三人の一人客がやってくる。五十代の男と三十代の女と二十代の男はそれぞれ事情があり理由があり目的があってこの地をおとずれグランオテルに泊まるのだが・・・というなんの変哲もなさそうな設定ですが、冒頭でいきなり不穏なシーンが描かれます。だからいずれそういう場面が訪れることはわかってる。でもなにがどうなってそうなるのかは全然予想がつかない。読み進めてもなんでそんなことになるのかぜんぜんわからない。
でもそれは突然訪れた。ほんとに冒頭のシーンになっちゃった。
ここからの怒涛の展開、というか、それまでは主人公(群像劇ではあるけど夏海が主人公ということでいいだろう)の両親という立ち位置でしかなかった夫婦が果たす役割の最高っぷりに、だから私は越谷オサムが好きなんだあああああああああ!!!と海に向かって叫びたい気持ちでいっぱいでした。
あーほんと最高。最高に決まってるって読む前から思ってたけどやっぱり最高だった。
三人のワケあり客の事情であり理由であり目的の解決というか決着というか、そういうもののつけ方も劇的ってんじゃないんだけどそれぞれにとってとてもいい落としどころで、絶妙なぽかぽか具合。
登場人物は夏美の従姉妹(超絶美少女)を加えた7人と少な目ですが、いつもながら人物の生きてる感がハンパない。たった二日間の物語で、一期一会じゃないけど人生のなかでわずかな時間を一つ屋根の下で共に過ごしたというだけの関係性なのに、そこに「生」がみっちみちに詰まってる。人生があるんです。だからみんなが愛おしい。越谷オサムの小説は愛おしいんです。



ところで、この本の帯には「君の膵臓を食べたい」で一気にブレイクされた住野よるさんの絶賛コメントが寄せられているのですが(これ(私にしてみりゃ「おせーよ!」ってなもんですが)出版社(業界)が越谷オサムをいよいよ売り出すつもりになった、ということでいいんですよね?)、私・・・・・・住野さんのお名前をずっと佐野さんだと思ってました・・・・・・著作何冊も読んでるのに・・・・・・。これが老化というものなのだろうか・・・・・・(過去感想文はそっと修正しました)。