『アンナチュラル』第8話

窪田正孝の泣き笑いが最高であることはもはや周知の事実ですが(だよな!)、ただそれをやらせればいいってもんじゃないわけで、物語の流れのなかでの自然な泣き笑いではないとダメなわけで、その点これは完っっっっっっっっ璧です。父親に本心を伝えたものの「二度と家の敷居を跨ぐな」と言われてしまい、美代子さんは家に帰ることができてよかったけど六郎的には孤独感マックスなところへもってきての「おかえり」に大笑いしてからの感極まって泣き笑いで「なんでもない、なんでもないです」って、まさに十八番、まさに真骨頂。羽生結弦トリプルアクセル窪田正孝の泣き笑いかってなぐらいの「鉄板」かつ「満点」感。
それまでも今回の窪田くんの六郎はどのシーンもぜんぶぜんぶ良かったんだよね。「六郎のろくはろくでなしのろく」だと自嘲した六郎が自分のために腹を立ててくれるミコトさんとともに“自分たちの仕事”でもって父親を見返してやるという動機付け、そこからの『9番さん』への感情移入。まさに窪田正孝の演じる久部六郎のための脚本で、ミコトと2人で呑んでるシーンも屋敷さんとのシーンも所長とのシーンも父親とのシーンも9番さんの両親を前にしてのシーンも、もうなにもかもどこのカットも六郎が六郎で、泣き笑いでトドメ刺されましたわ。
改めて言うけど窪田正孝最高な。何度も言うけど窪田正孝マジ最高な。塚原あゆ子フィルターを通った窪田正孝マジマジ最高な(ケータイ捜査官7好きとしては六郎と屋敷さんの将棋シーンがケイタとご隠居を思い出させる空気感だもんで懐かしいやらなにやらで泣きそうになったんだけど、Nのためにファンへのサービスに加えてそういう意図もあったんじゃないかと勝手に想像して塚原さんありがとう!と言います!!)。
中堂さんに続き六郎も結局闇落ちするようなこともなく、医者の家系に生まれ父親との関係に悩む坊ちゃんというだけでしたが、そういう言わば普通の、等身大の人間を演じさせてこそ窪田くんの画面のなかに物語のなかにすーっと溶け込む存在感が活きるのだとわたしは思います。
あと今回ほんとうに巧いなと思わされたのは、「帰るべき場所は家族(のところ)とは限らない」という話のなかでミコトと義母である「夏代さん」の関係をもひとつ進めたところ。
残り話数を考えると一家心中の生き残りであるミコトの話を描くことはもうないんじゃないかと予想するけど、9番さんが実は懸命に人命救助を行っていたことがわかり、そこには消防士である父親の影響があったであろうことが描かれ(前科者の9番さんがなぜ消防士が使う特殊なロープの使い方を知っているのだろうか?と思ったところで父親が「消防士だった」と明らかになった瞬間のカタルシスたるや・・・!)、それはおそらく夏代さんとまだ見知らぬその夫「三澄の(義)両親」に育てられたミコトもまた同じである、ということでもあったのだと思うの。で、そこにはそれ以上のことはないんじゃないかな。ミコトにはそういう過去があるというだけであって、放任主義の三澄家で秋ちゃんとともに育ち今に至ってるというだけで、それでも義母と義娘なのでそれぞれ思うところやなんかはあったりして、でもそれも含めての家族だし、UDIという居場所もちゃんとあるよと、その大切な居場所を守るために、残り2話は中堂さんの問題とUDIへの疑惑に立ち向かうんだと、そういうことになるんじゃないかな。それを夏代さんとの母と娘のやりとりだけで描きつつ、次回へ向けてミコトにとってUDIがどんな存在であるかをも描いてしまうところがなんとも巧い。
というわけで、いよいよ赤い金魚の謎と恋人を殺した連続殺人犯に対しどうする中堂!?どうするミコト!?ってな話になるようですが、ここへきて宍戸に対する容疑が濃厚に・・・と見せかけてはいるものの、宍戸が“犯人”ってことはないだろう。犯人だとしたら“自分が殺した女の恋人であり一時は殺人容疑で逮捕された男”に執着する理由があるとは思えないもの。6話だったかで「警察が掴んでない情報」をゲットできる能力があることを示したのは遺体の情報を得て張り込みしてる現状を説明する前フリといったところで、張り込み目的が中堂にあり、宍戸は“中堂系”に特別な感情を抱いていることは間違いないだろう。その感情は記者としてのものなのか、それとも個人的なものなのか。
ってところで、宍戸から六郎へ「ピンクのカバ」のイラストが届けられると。加えてイケテツ末次がそれを目にしたと。末次の目的はどうやらUDIのカネにまつわる疑惑のようなので、中堂を狙ってる宍戸とは目的が違うっぽいし、予告を見るにイラストは六郎と中堂の手に渡るようなので、末次を噛ませたのはこのタイミングで“視聴者に”ピンクのカバを見せるためってだけで、中堂の件については末次が介入してくることはないかなー。
で、宍戸が何故中堂が話しにしか聞いてなかった「ピンクのカバ」のイラストを持っていたかというと、こうじやゆきこが絵本を出版したのも週刊ジャーナルも共に「文詠館」であるからか。文詠館に出入りできる立場であることに加え宍戸ほどの情報収集力があればこうじやゆきこの次回作イラストを入手できても不思議じゃないもん。
一瞬、宍戸は絵本作家こうじやゆきこの担当編集者だった?と考え、だとすると宍戸は会社を辞めてフリーライターとなったということになろうわけで、その理由はこうじやゆきこを殺した犯人を調べるためしかないだろうと。で、担当作家が殺されるなんてことはそうそうあることじゃないだろうけど、それでも単なる仕事上の関係だったらそこまでしないと思うよねぇ。つまり、宍戸は糀谷有希子にこれまた特別な感情を抱いていたのではないか・・・とか考えてたんだけど、でも張り込みで♪ABC〜 とか歌ってんの見てそのセンは消えたなと。誰かが見てるならゲスを装ってのことかもしれないけど、誰も見てないところでこんなふうに歌ってたらそれはただのゲスでしかないわけで、宍戸はやっぱりあくまでも「記者として」事件を追ってる、ということだと思う。だとすれば宍戸がなぜ糀谷由希子の事件に目を付けたのかが気になるんだけど、それはやっぱり「恋人の遺体を黙って解剖した男」に興味があったってことになるのかな。