平野 啓一郎『ある男』

ある男

ある男

すべて読み終えたところであらためて序文を読み返すと、そのときには見えなかった絵が見えてくる。
これは「城戸さん」を主人公とする物語だけど、そこには戸籍を変えることで自分のそれまでの人生そのものも変えてしまう、書き換えてしまう男たちがいて、殺人犯の子供とか、在日だとか、人間というものは、そして私はいったいなにで出来ているのだろうかと、そんなことを考える。
それはきっと「城戸さん」が主人公だから。私もきっと「城戸さん」の背中に自分を重ねて読んでいたのだろう。