五十嵐 貴久『波濤の城』

波濤の城

波濤の城

女性消防士・神谷夏美シリーズ。
シリーズものであることをあとがきを読んで知りました。前作は「炎の塔」という作品なのですが、そういや私読んだわ。繋がりとしては神谷という女性消防士の存在ということになりますが(もう一人先輩の女性消防士もいるんだけどこの人が前作に出ていたかどうか記憶にない)、前作を読んでるのに読んでる最中は全く思い出さなかった。かすりもしなかったです・・・。
でもこの作品を読むことに対し前作の記憶皆無であっても全く問題ありません。消防士としての誇りを持ち人命救助をすることに一切の迷いをもたない二人の女性消防士についてその背景やなんかになんの説明を必要とすることなくサラっと読み進められます。それは同様に航海士としての誇りでもって任務を全うしようとする男の存在があるからだろうし、共に命がけでこの危機を乗り越えようとする人たちがいるからで、つまり群像劇として描かれているからだと思う。シリーズ主人公でありながら群像劇のなかの一人であること。それがシリーズものとしていいことなのかそうではないのかわかりませんが、作品単体で楽しめたことは事実。
その群像劇のなかで重要な働きを見せるのが船オタクなのですが、ちょっと前に読んだ作品でもオタクの専門知識が大いに役立っていて、どうせオタクとして生きるならばそういうオタクに私はなりたい。