宮部 みゆき『この世の春』

この世の春 上

この世の春 上

この世の春 下

この世の春 下

面白かったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!。
とある藩の若くて超美形のお殿様が乱心を理由に「押込」となり藩の別荘で幽閉されることに。事情があって夫と離縁した武家の娘がこれまたとある理由がありそこへ呼び寄せられ、お殿様改めお館様の心を救うべく乱心の理由である忌まわしき過去を暴く。
ってな物語で、読み始めて暫く、上巻の半分あたりまでは読み進めるのに苦労しました。時代モノなので時代背景や人物関係を把握できるまでちょっと時間がかかったし、帯に「サイコ&ミステリー」とあるのでそのつもりで読んでいるのになかなか“そういう感じ”にはならず、これ面白くなるのかなぁ?と何度か思ったりしました。でも必要事項が全て頭に入ったあたりからはもう超特急。さすがの「サイコ」で「ミステリー」。
時代モノだけにサイコ要素を「そういうもの」として描くのかと思いきや、地道に捜査し推理し、証拠と証言を集めて検証し、そうしてお館様の心をひも解いていく様は非常に理論的で理知的で、ぼんやりとした要素皆無。それでいで解明された謎、闇のなかにあったものはこの時代ならではのおぞましさで、やっぱり宮部みゆき容赦ねえな!!。
ていうか結構な人数が登場するのですが、新潮社の特設サイト(→http://www.shinchosha.co.jp/miyabemiyuki/)によるところの『史上最も孤独で不幸なヒーロー』である重興(お館様)は別格としてそこそこ「イケメン枠」はあるんですよ。実写化したらイケメンがやるだろうなーという人物はちょいちょいいるというのに、印象に残るのはやっぱり「おっさん(爺さん)」と「少年」なのよ・・・。忌まわしい過去に囚われ苦しむ美貌の殿様と辛い過去を持ちながらも強く聡明な女性がヒーローでありヒロインでありながらもその実おっさんの物語であり、一番オイシイとこ持っていくのは少年なのよ・・・。そうだろうとは思ったけど、わかってるけど知ってるけど、宮部さんほんっとブレないよね・・・・・・(笑)。
デビュー30周年記念特別作品と銘打つだけあってなかなかに長大な物語ではありますが、分量も内容もこれだけのものを、こういうタイプの作品を、こんなにも面白く読ませてくれるのはさすが宮部みゆきと言わざるを得ない。エンターテイメント性とリーダビリティの高さは今なお日本のトップランナーだなと改めて感じさせられる作品です。なのでもう一度書いておきます。面白かったーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!。