小路 幸也『東京カウガール』

東京カウガール

東京カウガール

なんだこの草食系の皮を被った暴力肯定小説。
祖母の仇を取るべく半グレグループを再起不能の半殺しの目に遭わせ続ける年上の女性に恋をした男の物語なのですが、表向きの理由として祖母は詐欺の被害にあい財産を奪われてしまったことを苦にして自殺したことになってるんです。で、孫娘がその詐欺グループに属するメンバーと思しき半グレたちを手足を砕き口を破壊し文字通り“瞬殺”しているのですが、本当の理由は孫娘がバイトしてたコンビニに半グレ野郎が現れ難癖つけて店や客に被害を与えようとしたのを腕力で止めたことに対する逆恨みで金を脅し取られたことにあるわけです。さらに孫娘は呑んだ帰りに絡んできた相手をこれまた腕力で叩きのめしたことで、こういう形で仕返しができるのだと、暴力でもって相手を再起不能に追い込む力が自分にはあるのだと気付き、そして復讐に至るわけです。
おいちょっと待てと。コンビニで暴れたクソ野郎はクソですよ。でもそれに暴力で対抗するのってどうなのよ?と。いくら店長は感謝してるといっても暴力なんて手段に出たから相手だって恐喝という手段に出たわけで、その結果祖母が自殺し、だったら暴力で仕返しするってなんでこれがちょっとほのぼのいい話になってんの。自分のせいじゃん。暴力などという安易な手段に出た自分が悪いんじゃん。それなのになんでラブ&ピースってな話になるの。
そんな暴力女を「カウガール」と呼び恋をする男の叔父は裏社会に顔が利く知る人ぞ知るゲイで、所謂クリーンルームである喫茶店を経営しその常連客には特別な立場の警察官(これまたゲイ)がいて、暴力女の母方の祖父は元傭兵などという実に小説らしい人物相関図なんでまぁ・・・一種のファンタジー小説だと思えばいいんだろうけど、それにしたってオーバーキルすぎてなぁ・・・・・・。