横関 大『ピエロがいる街』

ピエロがいる街

ピエロがいる街

とある地方都市に夜な夜な出没するピエロの男。ピエロの男の活動目的は街の人々の悩みを解決することで、就職活動中の立花はその助手としてスカウトされる。
おそらく「ピエロの正体」がまずあって、それを描くために様々な登場人物を配置し、それぞれの視点でもって「ピエロの正体」に向かってエピソードを重ねていったのではないかと想像しますが、ピエロと市長の関係も驚いたというか、そういう仕掛けが施されているような作品だとは思ってなかったんで思わぬところから球が飛んできて直撃されたぐらいの衝撃はあったけど、それよりピエロの“中の人”がチラっと出たあの人物だったのかー!!という驚きのほうが強かったです。これはまったくわからなかった。
伏線の回収の仕方というか、広げた風呂敷の畳み方というか、判明したピエロの正体とともにいろんなことが全て説明される流れは快感と言っていいほどだったし、正体が解っておしまいではなく愛する人愛する人が守る街のためにしたピエロさんの行動が巡り巡ってピエロさん自身を救うことになるという立花の成長を含めた“その後”まで計算され尽くしていて最後まで美味しく頂きました!ってな感じではありますが、ただ・・・・・ただこの物語の中に「殺人」という要素(行為)が果たして必要だっただろうか?という思いが残るんだよなぁ。この物語の雰囲気、空気感の中だとスパイスとしては強すぎるというか浮いてしまうというか、読んでる最中はそんなふうに思わなかったんだけど、読み終わってみるとそういう印象が残る。