似鳥 鶏『彼女の色に届くまで』

彼女の色に届くまで

彼女の色に届くまで

絵画にまつわる謎を天才的な絵の才能を持つ千坂桜と彼女の才能を見出し導き支える緑川礼が解き明かす青春ミステリーです。
高校一年で出会った二人が芸大に入りそして社会人になる時間の経過が描かれていて、その時々で事件に遭遇し解決しつつメインとしては父親が画廊のオーナーで自らには絵の才能があると思っていた緑川礼が、自らが見出した千坂桜という圧倒的な個性と才能、そして女性としての千坂に対し複雑な感情を抱きつつも離れられない関係のほうにあります。
二人と共にもう一人、風戸という友人がずっと登場しているのですが、このキャラクターが妙に味がある。とにかく自らの筋肉美を誇る男なんだけど、その筋肉が作中で何がしかの働きをすることはないんですよね。おかしな男であるということ以外存在理由が見つからないんだけど、でも風戸がいるから「青春」パートを楽しく読めたというところが大いにありました。結局最後までなんだかわからないキャラクターのまんまだったけど(笑)。
緑川礼の想いと千坂桜の想い。特別な才能を持って生まれた者の業と持たざる者の業というとちょっと大げさかもしれないけど、二人が共に生きる道として下した決断はなかなか好みの着地でしたが、ただ作中にウザいと思うほど注釈があって、最初は絵画(美術)に関する補足説明でありちょっとした薀蓄として読んでいた(読めていた)けど徐々にどうでもいいことも書かれるようになるのでもしかしてここ(過剰な注釈があること)に作品全体を通しての仕掛けがあるのかと思ったんだけど、別にそういうものはなくて、最後のほうはほとんどなかったことだしこんなにごちゃごちゃごちゃ入れられてなかったらもっとすっきりした気持ちで読み進められたのになーという気持ちは残る。