似鳥 鶏『一〇一教室』

一○一教室

一○一教室

お名前に見覚えはあるけど、たぶん初めて手にする作家さんだと思うのですが、完全なるジャケ買い
カリスマ教育者が学園長を務める私立恭心学園。全寮制のその学校は高い進学率を誇り部活動も盛んで、さらに素行不良や引きこもりの子供も「治る」と評判であるが、そんな学園内で男子生徒が突然死を遂げる。その死に不審感を抱いた親戚の男女はその死について調べようと動く。高い塀に囲まれ外からは窺い知れないその学園の内部では一体何が起きているのか。
ってな感じの作品ですが、読みながらどうしても総理夫妻の関わりについて今世間を騒がせている大阪の某幼稚園(教育施設)のことが浮かんでしまい、恐ろしくなりました。この小説は高校が舞台なので(学校は中・高一貫)主に暴力でもって子供たちを“洗脳”していくわけですが、幼稚園や小学校というまだ自分が教えられていることについて何もわからない、疑問を抱くことが出来ない頃からそういうものを刷り込まれる子供が現実に存在していることに対する恐怖と嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
それはさておき、この作品は、体罰でもって子供を服従させるシステム、教師の嗜虐性、暴力によって支配される閉ざされた世界で生きる子供たちの関係性、そんなところに子供を送りこむことで満足しその教育論をまるでカルトのように崇拝する親たちと、そういったものを描いていて、そこに男子生徒の死についてやたらと調べたがる親戚の女は何を隠しているのかという謎をからめ、さらに作中に挟み込まれる“インタビュー”にも仕掛けがあって・・・と胸糞悪い話ではあるものの読み物としては面白く読めました。