- 作者: 越谷オサム
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2016/11/22
- メディア: 単行本
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作中で副店長自身が深夜アニメかよ!的なツッコミ入れてますが、副店長が魔法使いとそのお目付け役に振り回される序盤はまさにそんな感じでして、副店長とアリスとまるるんの共同生活はそれはそれで微笑ましいものの私は何を読まされているのだろうか感は否めませんでした。でもそれがアリスという少女の素性が、魔法学校に通い魔法使いを目指している子供たちの事情が明らかになった瞬間、一瞬で形をかえた。まるで魔法使いがかけた魔法のように、今まで見えていたものが一瞬で姿を変えたんです。
それがわかると副店長とまるるんの
「そもそも魔法使いって何人ぐらいいるんだよ」
「国内だけで数万」
「多いじゃん」
「総人口と比較すれば、微々たる数だよ。それでも私には、とてつもなく多く思えるけどな」
という会話の意味が全然変わってくるし、魔法使いの活動内容が「人助け」であることの重みが全然、ぜんっぜん違うものになる。
最初は“14歳にしちゃ子供っぽいちょっとおかしな女の子”でしかなかったアリスの言動だけど、ひとつひとつその理由がわかるたびに胸が押しつぶされそうになり、同時に愛しさがぐんぐん増していく。
そして迎えた最後の日。ついにアリスはそれまでできなかった課題をクリアするんだけど、そこはもう予想通りというか期待通りというか、物語として「そうなる」以外の展開はありえないのでそれはそれでいいとして(そこに至る前フリもしっかりあったし)、その場に副店長の友達が立ち会ってるのがいいんですよ!!。この友達の存在、物語の中でこの友達が果たす役割、ここにこういう人物を持ってくるところが越谷オサムなんですっ!!!。
もう私この場面でダーーーーーーーーーって泣きましたからね。この人物にとってこの12年間は苦しいものだったと思うんだ。常に苦しいわけじゃないけどずっとずっと苦しみ続けてたと思う。それをアリスは救った。アリス自身はそのことに気付かないけど、アリスと副店長の友達の関係性があって、そして見事課題をクリアし免許皆伝となったアリスが魔法使いとして初めて救った人が副店長の友達だというこの流れがこれみよがしに“どうだ!”ってんでなくサラっと描かれるのが最高すぎる。
物語のなかにどうしようもない現実はちゃんとあって、それでも希望もちゃんとあって。
副店長と店長の話もよかったし、副店長とまるるんの呑み話もよかったし、麗舞君とお母さんのこともよかったし、そんでもってラストシーン。アリスのあの行動がこんなに素敵なラストに繋がるだなんて全く予想できなかったんで、またもや泣いた。電車の中で泣いたわ。あーもうオサム大好き!!!!!。