恩田 陸『蜜蜂と遠雷』

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

「ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。」
と帯にある通り、それぞれの運命を生きる天才たちが奏でる音楽が溢れる素晴らしい作品でした。
クラシックの素養もピアノコンクールの知識もない私なので、ありとあらゆる言葉でもって表現されている天才たちが鳴らす音を想像すらできないのは無論のこと弾いている曲さえ半分も知らなかったりするのでただ“読んでいる”だけというか、天才たちの物語を見て聞いてるだけで理解も共感もまったくできないし、その物語も言ってしまえば『ピアノコンクールが始まって終わるまで』の話でしかないので展開に乏しく平坦と言えると思う。それでも何度も涙がこぼれそうになった。なんの涙かわかんないんだけどこみ上げる瞬間が何度もあった。
理解も共感もまったくできないと書きましたが、だからといって登場人物たちが遠いか、と言えばそうではない。天才たちが感じていること考えていること、生きてる世界、それらを理解することはできないし想像することもできないけど、でも彼らを愛おしいとは思う、思える。この文量をキャラクター性だけで読み切らせてしまえる恩田陸のガチ本気に震えました。装丁も素敵!!。