歌野 晶午『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは

歌野晶午×江戸川乱歩ということで、歌野さんによって現代によみがえる乱歩作品たち・・・といった感じのミステリ作品集です。
いやあ、乱歩作品をモチーフにして書かれたというか乱歩にインスパイアされて書いたというか、なんと表現するのが適切なのかわかりませんが、とにかくこれすごいわー!。見事に「乱歩」と「現代」が融合してる。テクノロジーの発展によって『トリック』『謎解き』の可能性が広がる一方でロマンは薄れているように感じていたりするわけですが、この作品集に収められた作品たちも乱歩作品にある(私が感じた)色気であり質感があるかと言えばまぁ・・・ないなーという感じではあるし、乱歩作品と雰囲気は全然違うんだけど、でも世界観は通じるものがあるんですよね。それは作品の中で描かれているのが人間の“情(念)”であり、それは何十年経とうが社会が変わろうが時代が変わろうが変わらない、ということだからではないかな。
全て面白かったけど、なかでもタイトル作と『「お勢登場」を読んだ男』が特に好みです。