誉田 哲也『硝子の太陽』

硝子の太陽R-ルージュ

硝子の太陽R-ルージュ

硝子の太陽N - ノワール

硝子の太陽N - ノワール

姫川玲子を主人公とする「R」
ジウシリーズの東弘樹+歌舞伎町セブンを主人公とする「N」
姫川の事件と東の捜査が完全に同じ時間軸上で描かれるスペシャルコラボです。
同じ事件を描くのではなく、姫川は姫川の事件を追い東は東の仕事をするというものなので、片方のシリーズしか読んでいなければそちらだけでも充分楽しめます。
両方読んでるひとは「R」→「N」の順で読んだほうがいいと思う。姫川の事件の中である人物が被害者になるんだけど、それはジウシリーズ→歌舞伎町セブンを読んでいる人にとっては衝撃と言っていいことなのに、姫川の事件としては“要素のひとつ”でしかないんですよね。それがもどかしいというか、ちょっとこれジンさんたちどうしてんのよ!???ってことが気になりまくるわけです。で、「N」ではそれをがっつり描く。気持ち的にスッキリする(内容的にはスッキリというものではないけれど)。なので「R」→「N」をおススメします!。


「R」は派手で凄惨な事件を姫川と菊田以下新しい仲間たちが追うという“いつもの姫川シリーズ”ですが、ガンテツとはしっかり絡むし、今はガンテツの下にいるノリの成長も描かれます。さらに捜査の過程でドラマがあり、姫川と菊田の微妙な関係ありとシリーズとして読み逃せないしエンターテイメント性はやはり高い。
一方の「N」は沖縄で起きた米軍関係者による死亡事故を引き金とする反米デモから日米安保問題とお堅いテーマではありますが、東と陣内率いる歌舞伎町セブンとの共闘は読み応えあり。本来なら相対する立場でありながら、両者が協力する流れに気持ちとして無理がない。
物語のなかに「R」と「N」を結ぶ要素として明確な「事件」があるんだけど、それ以外に『戦争』というものでもって2冊に統一感とリアリティ(現代感)を与えているあたり、やはり誉田さんは上手い。