五十嵐 貴久『気仙沼ミラクルガール』

気仙沼ミラクルガール

気仙沼ミラクルガール

うわーこれ卑怯・・・・・・っ!!。
大震災後の2011年秋、気仙沼にアイドルグループが誕生するところから始まるんだけど、視点としてはアイドルを“作る側”の話なんですよね。アイドル側はひとりの少女の視点だけで、7割は地元じゃ負け知らずの40半ばのオッサンとミュージシャンを夢見て上京し10年頑張ったけどダメで田舎に戻ってきた30代のニーチャンの話なんです。で、「実話を元にしている」ということは帯に書かれているのでそのつもりで読むじゃないですか。そしたらオッサンにすごい展開が待ち受けていたわけですよ。ハァ!?なんだその超展開!?と思ったんだけど、それも実話だとか・・・・・・。
もうさ、こんなの感動するしかないじゃん。軸であるサカケンさんと詩織、そして二人を繋ぐリュー(とそれをささえる由花)の関係性・キャラ造詣をはじめ、五十嵐さんの、あえてこの表現を使いますが脚色が上手いこともあるのでしょうが、こんなの問答無用でグッときちゃうよ。ジャージくれるオジサンとかさあ!。
さまざまな形、さまざまな要素で震災を描いた小説を結構な数読んできましたが、現地取材したり被災者の話を元にしたりということはあっても“実話”を元にしたと明言してる作品を読むのは初めてです。詩織の状況、どうにもならない現状、サカケンさんの背景、そういうところに現実があるんだろうなと想像しつつ、この作品のなかに“事実”がどれほどの割合で含まれているのか、どれだけ“脚色”されているのかわかりませんが、これは“娯楽小説”としてとてもいい作品だと思う。