殊能 将之『殊能将之 未発表短篇集』

殊能将之 未発表短篇集

殊能将之 未発表短篇集

発売日当日書店でこの本を手にし、帰りの電車内でぱらぱらとめくった瞬間なんだかわからない感情に襲われ涙がブワっと浮かびました。
もう新作を読めることはないんだと思っていたのでまさかまさかという嬉しさと、これを読んだらほんとうにほんとうにもう二度と殊能将之の新しい(読んだことがない)作品を読むことはできないんだという哀しみと、それに加えて殊能さんの個人サイトを読み一方的に抱いていた・・・やっぱり愛情かな、そんなものがこみあげてきて、本を閉じて、本を抱きしめたかったけどそれはさすがに恥ずかしいので本を仕舞った鞄を抱きかかえながら涙を抑え込みました。
それから読みたいけど読んでしまいたくないを繰り返していたのですが、熊本と大分で発生した大地震の様子を見て、明日が来るとは限らない、今だって次の瞬間何かが起きるかもしれない、殊能さんの最初で最後の短篇集を読まずに死んだらどうするのだと、そんな思いに駆られ、ようやっと読み始めました。
そしたら超一気読み(笑)。
あれだけ勿体ないと思ってたのに、一篇ずつ大切に読もうと思っていたのに、読みだしたら大森望さんの解説まであっという間に読んでしまった(笑)。
だっておもしろんだもん。だって殊能さんの作品なんだもん。
大森さんが解説で書かれているように、「まぎれもなく殊能将之の刻印が捺されている」んだもん。
どれも最後の最後にニヤリとさせられてしまうんだもん。
やっぱり殊能さんは作品もお人柄も面白いなーと思う反面、改めてこの世から消えてしまった才能の大きさを思い知らされます。
かなしいな。かなしいのでこの短篇集を読んで読み返したくなったハサミ男からもう一度殊能作品を読もうと思います。
一度ならず何度でも、何度でも。