『重版出来!』第1話

とても気持ちのいいお仕事ドラマで初回はまずまず面白かった!。熱血新人が頑張るドラマに於いて、その「がんばり」を気持ちよく見られるのって嬉しいし幸せ。
その気持ちよさの理由として、まず黒木華ちゃんのビジュアルと声を含めた演技が上げられるけど、黒沢心という主人公の動かし方・見せ方にあるってことも大きいんじゃないかな。
この手のドラマって熱血新人が空回ってドジやらかして同僚とか取引先とかに迷惑かけて、落ち込んで、でもなんかのキッカケで逆転ホームランってなパターンが多いじゃないですか。でもこのドラマは主人公に無茶をさせない。主人公発信で“ピンチ”に陥るわけでもないし、そのピンチに対して何かしたいんだけど何も出来ないことを自覚していて、三蔵山先生に筆を折って欲しくはないけど自分が口出しできるようなことではないことをちゃんとわかってて、だから暴言吐いたうえにネットで書かれてる悪口を先生に送りつけ、さらにそれをネットで自慢してるアシスタントを「締め落としていいですか!?」「5秒でイケます」と憤慨するのが精々。
で、それは“普通”だよね。大の大人を5秒で締め落とせることは普通じゃないけどw、新社会人として、そして人間としてこの在り方は普通だと思う。だけどこの手のドラマは往々にしてそうじゃないことが多いじゃないですか。仕事のことや相手のこと、なにもかもロクに分かってないくせに自分の理想とか正義感を振りかざし好き勝手なことを言ったりやったりする主人公が多かったりするじゃないですか。結果がどうあれそんな人間迷惑以外のナニモノでもないよね。だからこそドラマの主人公になるんだろうけど、まぁ大抵は見ていてイライラするし疲れる(そんなもん見る方が悪いってなツッコミは今はご容赦ください)。
その点、まぁ脳筋ポジティブすぎるきらいはあるものの、この話での主人公の関わり方は無理がなかった。書店で仏像の「視方」を知ったこと。友人との何気ない会話の中で「歳を取るに伴い筋力が落ちる」という事実に気づいたこと。そして仕事中の三蔵山先生の姿勢を見たことと、デビュー当初と同じ道具を使い続けているという話を聞いたこと。これらすべて主人公でなくてはならないことじゃないよね。主人公以外の誰でも気づく可能性はあった。そのうえで、書店員との気の置けない会話は最強の研修生として頑張ったからだろうし、友人と筋力の話をするのは柔道でオリンピックを目指す環境にいたからだろうし、そこにはちゃんと主人公“ならでは”のことがあるわけで、そこから三蔵山先生の画の“問題点”に気づく流れに強引さがなかった。こういうドラマで主人公の言動に疑問とか苛立ちを覚えないってのはほんと珍しいよ。ついでに言うなら男所帯に紅一点という職場環境でありながら「メス感」をほとんど感じさせないところもいいと思うわw。
そんな主人公を支える脇のひとたちもいい。曲(癖)者役者勢揃いだけど、みんなその癖をいい意味で抑えた演技をしていて、力の抜け感が心地いい。このポジションこのキャラに良々とか絶妙すぎるしw。
ていうかオダギリジョーなんなの!?この普通のオダギリジョーが死ぬほどカッコいいんだけどなんなのっ!?????。
今年わたしが見た(観た)男のなかでこのオダギリジョーが一番カッコいいわ・・・・・・・・・(次点はセーラー服と機関銃長谷川博己)。


三蔵山先生の話はアシスタントや読者(ネット上で)から罵詈雑言を投げつけられたことに傷ついているのかと思いきや、漫画を通して自分がずっと伝えたいと思っていたことが、伝わっていると思っていたことが伝わってなかった、伝えられていなかったことに落ち込んでたってのが切なくてよかったなぁ。そして奥さんはそんな三蔵山先生の想いをわかってるんだよね。だから励ましたりせず庭に蓮華が咲いてミツバチが来てるってな話をする。三蔵山先生が大御所には珍しい人格者でいられるのはこの奥さんの存在があるからに違いないと、このシーンだけで確信できる。
だからこそ、先生のピンチに今や連載を抱える門下生たちが駆けつけてくれたことに素直に感動できるんだよね。その前フリとして先生のところでアシスタントやってた人達は三週間前進行だっけ?原稿を前倒しで描いてるってな話もちゃんとあったし、話の流れが丁寧。
そもそもの騒動の発端になったアシスタントの暴言、これもコイツが言いださなけりゃ三蔵山先生の姿勢問題はもっと先送りになっていたかもしれないし、もしかしたら気づかれないまま(誰も指摘できないまま)だったかもしれない。先生のデッサンが狂ってると、「みんなそう言ってる」ってのは門下生たちや現役チーフアシスタントのムロツヨシあたりも思っていたことなのかもしれないけど、でも先生を尊敬してる彼らにはそれを指摘することは多分できなかったんじゃないかな。ここいらへん、いい話の中にちょっと苦い現実が入ってるのも好みです。
結果的にアシスタントの暴言(指摘)が三蔵山先生を救ったことになるわけで、そのアシスタントもまた三蔵山門下生には違いないわけで、連載再開した三蔵山先生の漫画を読んでやっぱこの人凄いなってな顔してたし、描いてる時は姿勢のせいでデッサンが狂ってることに気付かないとしても、完成した原稿もその姿勢で見るわけじゃないだろうし、原稿確認までが仕事だからとその姿勢で行ったとしても本誌に掲載されたものを見るときはさすがに違う姿勢で確認するのではないかと思うわけで、それなのに気付かなかったのかなーと、そこにちょっとした引っ掛かりを覚えなくはなかったけど、三蔵山先生の愛されっぷりが微笑ましかったのでヨシ!。
ってところで気になるのはムロツヨシなのよね。暴言アシスタントはフォロー入ってたけど、ムロツヨシだけは先生に対して具体的な手助けを出来ないまま終わってしまったわけで、みんな漫画家として独り立ちしてる門下生たちに対する複雑な感情だってあるだろうに、ムロツヨシのフォローがなかったのが気になる。1話ごとに違う漫画家の話になるんじゃないかと思うんだけど、この先ムロツヨシの話もあったりするのかなぁ?。