秋吉 理香子『聖母』

聖母

聖母

連続幼児殺人犯の視点と、大変な不妊治療を経て産んだ娘を守ろうとする母親の視点で描かれているのですが、この二つの視点にトリックが仕掛けられているであろうことは明白だし、おそらくはそれだけではないだろうと、もう一つなんし二つは引っかけがあるのではないだろうか、という予想も(ミステリーを読み慣れた者として)できてしまうのですが、前者はいいとしても後者のほうがなぁ・・・。あちこちに「あれ?」と思う描写があって、これがどんな物語であるのか、どんな構図であるのかが明らかになってみればそれらは全部「ヒント」であったとわかるんだけど、それにしてもあまり上手いとは言えないなーと。「あれ?」と思った箇所は全部意図的なものだったとわかっても、でもスッキリしないんだもん。「そういうことだったのか!」と思えない。タイトルの意味を考えればそれが主題(そこが読みどころ)というわけでもないのでしょうが、むしろそのタイトルに込められた意味・意図は面白い(という内容ではないけれど)と思っただけに、もうちょっと引っかけの部分を上手いこと書いてくれていたら良作になったかもしれないのにという残念感が残ります。