雫井 脩介『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』

そうしたほうが売れるという思惑があることは想像に難くないけど、これ「犯人に告ぐ2」にしないほうがよかったんじゃないかなぁ・・・。
振り込め詐欺グループが企てた誘拐を捜査する警察というストーリーはさして目新しさがあるわけではないもののそれなりに読み応えはあるんです。でもはっきりと「犯人に告ぐ」の続編にしたことで、登場人物を始めとする前作のあれやこれが引き継がれているわけで、『巻島』という主人公のことはぼんやり覚えてるけどそれ以外はテレビのニュースに出て「犯人に告ぐ」って言ってたことぐらいしか憶えていない私にとっては正直それが邪魔でした。読み返せばいい(読み返さない私が悪い)ってな話ではあるんですが、読書に使える時間が限られている中わざわざ読み返そうとは思わなかったんですよね。今最新刊を読むためにシリーズ1作目から読み直してる他作品があることを思えば「時間がない」ってのは言い訳にしかならないんだけど、まぁ・・・私にとってはその程度のモチベーションで読み始めたわけです。
繰り返すけど、ストーリーは悪くなかった。特に犯人側の関係性、物語性は面白かった。だからこの作品が続編ではなく単体であったならば、もっと犯人側を掘り下げたのではないか?と思うと勿体なさを覚えてしまうんだよなぁ。警察の人事(権力争い)とかこの作品においては余計な要素でしかないし、でも続編であるからそれを描かねばならず、結果「何」を描きたいのかが伝わってこない散漫な作品になってしまったように思います。ていうか犯人に告げてねーし。兄を“落とした”一言が「犯人に告ぐ」ってなことなんだろうけど、とってつけたようにしか感じられなかった。
でもいつになるかはわかりませんが、おそらくあと1作は続きが出ると思うんですよね。その『引き』は悪くないので、続きがあるならなるべく早くお願いしたいところ。