早見 和真『95』

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2015年。37歳の主人公にSNSを通じ母校の在校生から卒業制作として在校当時の話を聞かせて欲しいというメールが届く。偶然にも待ち合わせ場所に指定された店はかつて自分達が行きつけにしていた店。そして待ち合わせに現れた女子高生には友人の面影があって・・・という始まりで、主人公が当時の事を回想するってな構成で20年前の渋谷を舞台に繰り広げられた高校生たちの刹那的な日々を描いた作品です。
主人公とほぼほぼ同年代の私なので、読みながら懐かしいというより気恥ずかしさでいっぱいでした。自作の小沢健二ベストとか、主人公たちが買い物に行った店のラインナップがもう当時の私そのものでですね、いやあ・・・キツイわ(笑)。
ってな個人的感情を抜きにすれば、ちょっと違うかもしれないけどIWGPの渋谷バージョン的な感じで楽しく読めました。IWGPもそうだけど、街の景色が浮かぶから臨場感があって、そこで躍動する若者たちの魅力が何割か増すってところはあるよなー。主人公の世界観を変えてしまうという理由として現実にあった事件を取り込んだことによって心情的に理解できてしまったし。
でもこんな青春時代を過ごした彼らの二十年後は、あの頃があって今がある、カッコいい大人になっているか?強く生きているか?ってのが主題でしょうからむしろそっちが本命と言えるのでしょうが、綺麗にまとめすぎた感じはあるかなぁ。二十年前パートはこれだけ時代感があるのに二十年後パートにはそれがないというか。それぞれいろいろあっていろいろあると言うけど四十前の男女が大晦日の夜中に渋谷まで出向けてるって時点でそんなたいした「いろいろ」じゃないよね・・・ていうか恵まれてるよね・・・と思っちゃうのが現代なわけで。だから物語の畳み方はあまり好みではありませんが、でもまぁ後味はいいし、全体的には面白かった。