中山 七里『総理にされた男』

総理にされた男

総理にされた男

売れない舞台役者の男が顔と声が似ていることから急病に罹った総理大臣の替え玉をする羽目に・・・という物語で、先日まで夢中で観ていた某連続ドラマを思い出してしまったわけですが、ドラマのほうは総理に成り代わるのが馬鹿息子だったのに対しこちらは総理のモノマネで舞台に立つ役者という大きな違いがあるのでかなり早い段階でドラマのことは頭から消えました。
で、これはこれで面白かった。『替え玉』(入れ替わり)としての面白さは(ドラマと比べて)さほどでもない、というかそれ自体に面白さがあるのではなくそれはあくまでも設定で、そこから先の展開こそが読みどころでして、その展開がまぁ結構ぶっ飛んでるんですよね。あえてネタバレしますが、総理死にます。サックリ死にます。これどうすんの!?って思ってたら更なるビックリ展開が待ち構えてまして、もはや替え玉云々なんて話ではなくなってしまうのです。
で、これどこへ向かっているのだろうか・・・と若干の不安を覚えつつも更に読み進めると、今度は現実とリンクしているというか、いずれ現実に起こりえるかもしれない事件が勃発し、最後はドラマ同様「テレビのdボタンを使っての国民投票」と、昔ドラマで使われていた表現を借りると「ジェットコースター小説」ですわ。
でも展開それ自体は現実味がないかもだけど、特に法律の関する情報、やりとりは非常にしっかりしてる(と思う。大した知識もない私からすれば、です)ので、そんなに荒唐無稽な感じはしない。それどころか閣僚たちの設定が実在する政治家を模してることもあって、リアリティすら感じてしまうほど。主人公の替え玉っぷりも「元から研究してる」「舞台度胸(役者馬鹿)」の為せる業だと思えば許容範囲だし、ドラマとの類似・相違点を探しながら読んだことも併せて、とても面白かった。