五十嵐 貴久『炎の塔』

炎の塔

炎の塔

銀座に建てられた超高層複合施設のオープン初日に火災が発生という現実味のあるようなないような・・・作品なのですが、「タワーリング・インフェルノ」に触発されて書かれたものだそうで、なるほど納得。
消火及び人命救出活動にあたる消防士を始め、ビルのオーナー、その場に居合わせたあらゆる階層の客による多視点で描かれているのですが、命の重さは不平等のようで平等というか、生と死を分かつのは陳腐な表現だけどやっぱり「運命」なのかなーとか思ったり。
誰かを守ろうとした人も他人を押しのけ生きようとした人も「死者(被害者)」という言葉で数えられてしまうのだけど、でも生き残った人々によって、生かされた人々によって彼らの最期は語られる。
もはやいつどこでどんなことに巻き込まれて死ぬかわからないご時世なので、いざって時はカッコよく死ぬのは無理でも静かに死ねる人間で在りたいと常日頃から心がけてはいるけれど、多分・・・・・・無理だよねぇ。