『仮面ライダードライブ』第46話「彼らはなぜ戦わなければならなかったのか」

チェイスが自爆という捨て身の攻撃を仕掛けたというのに、チェイスの残骸(・・・・・・)が転がる向こうから悠々と蛮野が現れた瞬間の絶望ったらなかったよね。
そして「プロトゼロは無駄死にした。愚か者のすることはすべて無意味なのだ」と言う蛮野。
蛮野の姿が見えた瞬間まさに「無駄死」という言葉が浮かんでしまったもんだから、奥歯ギリギリ噛みしめちゃったよね。
そんな蛮野に「だったら・・・テメーの存在も無意味だな。人間じゃねーヤツが、こんなに優しいのによお! 腐りきったお前の心こそ、一番愚かだ」と剛。
「そもそもお前の身体の不調がプロトゼロを殺した」と言われボッコボコにされた剛は、倒れ込みチェイスとのあれこれを思い返しながら「馬鹿野郎は俺だ」と「意地ばっか張って失うまで気づかねーで」と自嘲する。
そして剛は立ち上がる。ズタボロ状態で「待てよ」と立ちあがる。
「もはや力の欠片も残されていないはず」と驚く蛮野に
『寝ぼけたこと言うな。俺の全身からあふれ出す怒りの炎が見えねーのか。テメーは、いくつも許せないことをした。俺の心を利用し、姉ちゃんを侮辱し、クリムの発明を悪用し続けた。だがな、今いちっばん許せねーのは、俺の・・・俺のダチの命を奪ったことだぁっ!!』
剛はチェイスに託されたシフトカーを、チェイスの宝物を握りしめ、祈るように、想いを込めて
『いくぜチェイス、一緒に戦ってくれ』


剛オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
ばかばかばかばか、おせーよこのばか!!でもよく言った!!よく言ってくれた!!
ずっとずっとずーーーーーーーーーーーーーっと剛の扱われ方に怒り憤り嘆いてきたけど、この瞬間そういうのぜんぶ霧散した。これまでのぜんぶをこの瞬間の剛は見事に蹴散らしてくれた。
もうさー、剛が思い出したチェイスとのあれこれが誰がどうみたってダチとのソレでしかなくってさ、それなのにそれを「失うまで気づかなかった」剛が切なすぎてさ、だけど、だからこそ、自分のことよりもクリムのことよりも、姉ちゃんのことよりも、何よりも許せないのは『俺のダチの命を奪ったこと』が剛を奮い立たせてるんだとわかるわけですよ。剛の痛みが苦しみが、後悔が、その想いが狂おしいほど伝わってくるわけですよ。
そんでもっての「いくぜチェイス、一緒に戦ってくれ」。予告にあったこの台詞を剛がどんな流れで言うのか楽しみだったけど、もうこれ以上ない、最っっっっっっっっっっ高の「ダチとの共闘」だったよね。


でも剛の見せ場はこれだけじゃ終わらなかった。
チェイサーマッハになった剛は蛮野に力を奪われそうになるもバイラルコアの助太刀によって呪縛が解かれるや否や、片翼を背負い渾身のグーパンチを顔面にぶち込んで
『返せ、それは俺達の武器だ!!』
って!!!「俺達の」って!!!!!!。
そしてチェイサーマッハに倒され身体を失いベルトの姿に戻りながらも「データ」としてでも生き延びようとする蛮野に向けて「俺達の武器」であるシンゴウアックスを振りかぶる。
いつものように「マッテローヨ」するアックスを握りしめる剛に対し、「ま、待て・・・っ!」と無様に慌て、命乞いをする蛮野。
そしてついにアックスが「イッテイーヨ!」。
それを聞き、剛は
「イッテイイ・・・・・・ってさ」
そう言って躊躇わず蛮野ベルトにアックスを叩きつけた。
「さよなら父さん。・・・・・・俺の未練」


まさかアックスの「イッテイーヨ」にこんな役割があったとは。
マッテローヨからイッテイーヨの間、剛は何を考えていたのだろうか。
この時の剛ってば、もう・・・なんて表現したらいいのかわからない、すごい顔してたよね。仮面ライダーの顔じゃなかった。
それもそのはず。だって今自らの手で木端微塵にしようとしているのは「父親」なんだもん。心が腐りきってるバケモノだけど、剛にとっては「父さん」なんだもん。
それでも剛は躊躇わず、断罪の斧を振りおろした。かつて死神と呼ばれたダチの武器を。
まだ19歳の兄ちゃんになんてことさせるのかと。なんてものを背負わせるのかと。そう思わずにはいられないけど、でも剛は立派だった。
ロイミュードを倒すための仮面ライダーとして戦い続けた剛が、蛮野天十郎の息子としてやるべきことをやった。
登場当初こそバカみたいだったけど、父親の罪を背負い姉ちゃんを守る剛のこれまではきっと辛いものだっただろう。
そのうえ父親の命乞いがテメーの優秀な頭脳がどうのこうので、“息子に対する父親”のソレじゃなかったとかさぁ。
そこで嘘でも父親らしいことを言わない、とことんまで自分のことしか考えてない蛮野をおもうと、「さよなら父さん。・・・・・・俺の未練」という言葉にどれほどのものが詰まっているのだろうかと、剛が抱える、抱え続けるのであろう痛みに押しつぶされそうになるよね。
未練にさよならした剛の未来にどうかどうか幸せがたくさんありますように。


ブレンさんと剛、一年間見続けるための原動力だった二人がそれぞれの物語をしっかり生ききってくれたので、わたしはとても満足です。
あとはもう心置きなくハート様と進ノ介の殴り合いを見るだけだ。