『天才探偵ミタライ〜難解事件ファイル「傘を折る女」〜』

原作の記憶はおぼろげですが、初期御手洗比としては変人度は低めだった記憶がある+演じるのがタマキングときたらイイ声の解説マシーンになるであろうとは予想してました。予想しつつクールビューティ御手洗にちげえええええええええええええええ!!って叫ぶつもりでいましたが(ミルクティーが飲みたいっつって出向いた喫茶店(これキョウリュウジャーでアミィがバイトしてたお店?)で窓越しにアンニュイな顔する御手洗ってかタマキングカッコよすぎてワロタw)、洗練されてる超絶イケメンな石岡君の前ではクールイケメン御手洗なんぞ余裕で許容範囲であった。
ベクトルはだいぶ違うもののハイテンション変人は竜也がやってしまってるわけで(SPの赤木)、ルックスで勝負はできても変人演技で竜也に敵うわけがないからイケメン変人方向に舵を切ったのはむべなるかなとは思うんだけど、ヘアスタイルばっちりキメてるイケメン石岡君とセットになると違和感どころの話じゃねーぞ。割烹着着せてもトナカイの着ぐるみ着せても、イケメンはイケメンです。センスよくないシャツだのジャケットだのパンツだの身に着けてても野暮ったさ皆無。これじゃキャラ萌えできねーよー!現場の前で馴染みの刑事がくるのを待ってるスタイリッシュな二人とか求めてないんだって!。
こういう石岡君にするなら竜也に敗北するの覚悟で躁状態の変人御手洗にしたほうが絶対よかったと思う(石岡君が「今日は機嫌が悪い」だの「もう機嫌は直った」だの言ってただけで(この時期の)御手洗が精神的に不安定であるってのは原作知らない人には伝わらないんじゃないかなぁ?)。このスタイリッシュでカッコいい石岡君なら人生イージーっぽいじゃん。何も男と暮らしておさんどんする必要なんてねーだろと思っちゃうじゃん。そんな石岡君をもってして“放っておけない”と思わせちゃう、俺が世話してやらなきゃこいつは人間としての生活を送ることができないからと、それぐらい破天荒な男が御手洗なのであるとかさ、それぐらいじゃなきゃ。それならこんなにカッコいいのに御手洗という“ヒモ”がついてる・・・ってんで石岡君の残念度も伝わるし。そんなものは御手洗と石岡君じゃないんだけどさ、でも光一さんをキャスティングしちゃったわけで・・・。
・・・でもこの原作だとそんなに変人っぷりを見せるとこないんだよな・・・。御手洗的には話聞くだけで(室内から一歩も出ずに)解決できちゃうレベルだからそんなにテンションも上がらないだろうし。
だからまぁこれも事前に予想はできましたが、やっぱこれ原作選び失敗だろ。奇行もなけりゃ演説することもないから御手洗のキャラを“見せる”のに適してるわけでもないし、連ドラの1話だったらいいけど2時間かけてやるネタじゃない。その本筋以外の隙間でキャラを描いたつもりなのでしょうが、御手洗→クール 石岡君→スタイリッシュヤレヤレ系 と一言で言い表せる程度の描写でしかないし、勝村さんと坂井さんの刑事コンビも勝村さんはいつもの勝村さんだしこの女性刑事がなぜ坂井真紀?だしね。坂井さんが演じてるわけだから若い女のつもりじゃないんだろうけど、あの程度のことでもう耐えられないと泣きだすとか更年期かよとすら思ったもん。刑事なんて足で稼ぐ仕事でありながらイタリア製のオーダーメイドパンプスを履いてることになんらかの拘りとかプライドがあるのかと思いきや、ゴミ捨て場で証拠品探してダメにしたってなオチでそうじゃねーだろと。この女刑事をこういうキャラにしたのは御手洗の女嫌いを演出するためじゃねーのかよと。
でもなによりも痛感したのは、やはり島田荘司のミステリーは『小説』でなければならないいうことですよ。奇想天外なトリックをどう文字として文章として読者の頭の中に届けるか、島荘の優れているところはソコなのだと。
恐らくこのドラマの謎解きに突っ込まなかった人はいないよね。雨の中での偶然の出会いは勿論のこと、祖父江宣子を調べたらすぐバスジャックが浮かぶはずだし、犯人がどれほど周到に掃除したとしても鑑識であればハムスターを飼ってることぐらいわかるはずだし、雨の中ずぶ濡れで歩いてたら目立つわけで、そこで折れた傘見て濡れてる理由に納得したからといってずぶ濡れの女を見たことを忘れるわけじゃないしってんでツッコミどころしかないよね。でもそれ読めちゃうんですよ。それを読ませてしまうのが島田荘司なんですよ。画にしたら偶然に頼りまくりの無理ありすぎだとしても、文章であるから楽しめる。それを改めて感じました。
だからこのドラマ見てなんでこんなのをドラマ化したの?と思ったひとは、とにかく『占星術殺人事件』を読んでほしい。そしてできれば『異邦の騎士』も。そしたら島田荘司がいかに凄いか、御手洗潔が日本ミステリー史上有数の名探偵であることがきっとわかるから。