深木 章子『敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿』

敗者の告白  弁護士睦木怜の事件簿

敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿

つい先日娘を事故で亡くした家族が慰安のために出掛けた別荘で今度は妻と息子が転落死するという悲劇に見舞われた。その直後、以前取材で一度だけ会った編集者の元に妻から自分と息子を殺したのは夫であるという告発文が送られ、また夫の母親あてに死んだ孫から両親に自分は殺されるだろうという内容のメールが届いていることが明らかに。それにより夫が逮捕され、夫の弁護士は事件関係者に事情聴取を試みる。
関係者が弁護士に対し話をするという口語スタイルで事件(問題の家族)を多角的に描いた物語で、肝は最後に弁護士が犯人「X」にあて事件の真相を小説の形で語り、それに対し犯人「X」が補足という形で本当の『動機』を語るというもの。そしてタイトルに「弁護士睦木怜の事件簿」とあるのに、女性であること以外弁護士個人を描く描写は一切ないこと。
事件の構図、関係者の人物像や人間関係、それらはもうよくある話(小説の中でも現実でも)なんで驚くようなことは何一つないものの、丁寧に伏線が張られそれを全て回収してくれているので(犯人が“そのつもり”で用意したものなので当然と言えば当然なんだけど)端正な物語という印象です。
とか言いつつ犯人の動機について『好意』という単語が出た瞬間はキター!!とテンション一気にあがったんですけどね。私ってほんと・・・・・・。