長沢 樹『武蔵野アンダーワールド・セブン―多重迷宮―』

ひと昔(いやふた昔か?)前によく読んだ○○○○モノですが、それを今こうやってストレートに描かれると一周回って新しい気がするようなしないような。
ネタ的にはかなり早い段階で思いつくんですよね。もしかしてこれ○○○○なんじゃないか?って。でもまさか今更そんな話じゃないよなーと思ったらやっぱりそれで、でも繰り返すけどその使い古されたネタをドストレートに描いてるんで古い感じはしませんでした。ていうかこのネタを描くために用意した独特の世界観がとても魅力的で、○○○○になった理由は「南北に分断された日本」「“北”を源流とする反政府組織が拠点とする“禁止区域”」という環境で生まれ育ったが故のことなんだろうという理解はできるものの、その頃の日本の様子、禁止区域内で何があって発見され救出されたのか、そこいらへんが具体的に描かれてはいないので記憶を失っている少女・七ツ森神子都の神秘性というか、それこそなぜ周囲の人間、それも優秀な人間たちが命を賭けてまで神子都の『有用性』を証明すべく尽力するのか、そこがわからない。わからないけどこの世界観で読めてしまう。並行して描かれる二つの連続殺人はどちらも陳腐な動機だし、恋愛感情で事態を収拾させちゃうのも安易だと思うんだけど、それでもなんか納得できちゃうだけの世界観で元が取れてしまった。