薬丸 岳『神の子』

神の子 上

神の子 上

神の子 下

神の子 下

“18歳まで戸籍がなかった”“超人的なIQの持ち主”という主人公が裏社会を舞台に国を変えようとしている狂信者とバトルを繰り広げる的な話かと思いきや、主人公が感情を知り仲間を得るハートフルな物語であった。悪くはないけど私が求めてたものとは違いすぎた・・・。
ていうかこれ上下巻にする必要があったかなーと。謎の男である主人公がどんな人間なのか、主人公にとって罪を被り少年院に入ったほどの存在である「ミノル」の行方を探すことで周囲の人間がそれを知るんだけど、読者的にはそれ最初から分かってるんだよね。主人公とミノルの間に何があったのか、主人公にとってミノルがどんな存在なのか、それは(なんとなくにせよ)分かってるの。その分かってることを延々後追いで読まされ続けるわけだからダレる。終わってみれば主人公ひとりを描いているわけではなく群像劇だった気がしなくもないのですが、“気がしなくもない”というぐらいでどっちつかずなんですよね。章ごとに視点を決め、その人物にとって主人公がどういう存在であるのか、主人公と関わる中でその人物がどう変わっていったのかを描き、その中で少しずつ主人公の成長が積み重なっていくとか、そんな感じで描いたほうがメリハリがついたんじゃないかな。そんなよくあるパターンの話を読みたいかは別の話として(そういう意味ではもっと『敵』としてのムロイとムロイが率いる「組織」の話を読みたかった)。