中村 文則『A』

A

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なんだこのチンコ小説集(笑)。
13篇からなる作品集で全部が全部チンコ小説ってわけじゃないし、1篇目はゴッホの“糸杉”がモチーフのじっとりとした気持ち悪さが素晴らしい作品だし、特にラストの3編は「生」の在り方というか、重みというか価値というか意味というか、それは人によって違うし世界によって違うし場面によって違うし・・・なんて考えさせられたりしたけれど、でもトータルするとチンコしか残らない(笑)。
なんだよ『ちんこテロだ!』(セールス・マン)って。
なんだよ『僕のチンコが乱視です』(体操座り)って。
でもこのぐちゃぐちゃでぐちょぐちょな感じに安心する。
異なる媒体に発表された短編をまとめたらなんとなく統一感があった、といったことがあとがきに書かれてて、つまり私にとってはそれが「チンコ」だったということになるわけでしょうが、だから私は中村文則が好きだと自信を持って言えるのだ。