五條 瑛『シルバー・オクトパシー』

シルバー・オクトパシー (文芸書)

シルバー・オクトパシー (文芸書)

裏社会で「亡八」と呼ばれる揉め事解決のプロ集団が脱北者である女性に安全な生活を与えるという依頼を受けたが、依頼人である韓国人の男が強制送還された直後に変死した。信用商売なので依頼人の生死に関わらず依頼をやり遂げようとする“タコ”たちだが、その頃裏社会では“大物脱北者”の噂が広まっており・・・ってな話で、拉致被害者や北に亡命した連合赤軍なんてものを絡めつつ五條さんお得意の謀略小説なのですが、これまでの作品とちょっと違うのはシルバー・オクトパシーの面々の設定で、日本人と外国人のハーフだったり、日本人の血は入ってないものの日本に縁があったり、生まれ育ちが普通じゃない人たちなんですよね。この時点でかなり“盛ってる”。そのうえ表紙が8人のシルエットであることからそれぞれプロ級の武器を持つ彼らが憎まれ口叩き合いながらも時に協力し時にフォローし合って依頼を遂行するという話を想像するじゃないですか。
でもあんまり8人の設定に意味はありませんでした・・・。一番強烈なツインテールゴスロリ女(30歳)ですら意味がなかったし、ロシア美人や偽装結婚を繰り返す伊達男などというキャラに至っては顔見せしたぐらいでほとんど絡むことがなかった。まぁ他にも仕事抱えてるわけだし8人全員でことにあたる必要はないんだけど、でも8人だからタコである以上絡めて欲しいよなー。
とはいえストーリーは面白い。あちらこちらに散りばめられた各要素が全て謎の女脱北者に繋がるであろうことは明白なんだけど、どう繋がるんだろうか?という興味だけでグイグイ読ませてくれる。
だからこれこんな属性くっつけまくった設定ではなく普通にカッコいい男達(まぁ1.2人なら女が居てもいいけど)でよかったのにと。それでこの関係性なら妄想のしがいがありそうなのにー!。
でもまぁ最も古株の社員たった一人しか顔すら見たことがないという「社長」の存在が不明のままだしおそらく続編が出ると思うんで、そしたら次は今回活躍しなかったメンバーが中心になるでしょうからとりあえずそれを読んでからかな。