緒川 怜『迷宮捜査』

迷宮捜査

迷宮捜査

都内で二人暮らしの母親と息子の無残な死体が発見され、現場に残された遺留品は未解決の一家四人殺害事件で残されていたものと同じだった。調べを進める中で浮かんできた北朝鮮の存在。そして十数年前に起こった暴力団同士の抗争の巻き添えで死んだ少年。
・・・ってな話で、事件を捜査する警察視点で描かれ、北朝鮮ときたら当然公安も絡むわけで、だから“そういう話”のつもりで読んでいたのですが、読み終わってみれば家族の物語、家族のために犯罪を犯す人間の物語でした。環境と運が味方したとはいえどいつもこいつも易々と「殺人」というハードルを越えている(ように思える)ので同情も共感もできないし、そういうことだと解った上で読み返したら結構粗がありそうではあるんだけど、話としては面白かった。苦すぎるラストカットまで含めて。