伊坂 幸太郎『首折り男のための協奏曲』

首折り男のための協奏曲

首折り男のための協奏曲

明確に「連作」として描かれたものではなく、異なる媒体で発表された各物語をまとめた本に「協奏曲」というタイトルが付けられている意味、最後の最後でその意味が解った瞬間、それまでのゆるい繋がりだと思っていた全ての物語に一本ビシっと筋が通る。多分「こじつけ」ではあると思うんですよ。それこそ『僕の舟』で黒澤がものすごいこじつけで「元素記号」にこじつけてみせたように、繋げようと思ったら繋げられなくもないという感じなのだと思う。でもその繋がりは不思議なほどに心地よく、そしてなんとはなしに嬉しい感じがする。密接にではなくぼんやりふんわり繋がってる感じが嬉しくて楽しい。
それはきっとこのラストシーン、佐藤(「念のため隠れておくか」がまさかこういうことだなんて!)が街の楽器屋で素晴らしい演奏をするというこの場面の力なんじゃないかな。こういうシーンを描けちゃうから私は伊坂幸太郎という人が好きなんだ。