斉木 香津『幻霙』

幻霙

幻霙

同棲している恋人に無差別殺人犯と“似ている”と言われた男が自分とどこが似ているのかと思い犯人について調べ始めたら、自分の生育環境、特に母親との関係性がとても似ていて・・・という話がどこへ行くのかと思ったら、そっちにいったかー。主人公の男とともにその同棲相手の視点でも描かれるのですが、この女がもう絵に描いたような頭の悪い女なんで逆に前向きな可能性が見える結末になるかもなーと思いながら読み進めたけど、やっぱそっちかーと。
あと主人公の目を通して描かれる職場の同僚描写が実感としてわかるだけに気が滅入った。みんなそれぞれいろんなものをいっぱい抱えてるんだろうなぁって。そしてそういう人間は憂いたり憤ったり諦めたりするだけで抱えてるものをどうにかしようとする努力をしない。方向は間違ってるけど、主人公にすらなれないのがこの同僚たちなんだよなぁ。
・・・・・・とまるで他人事のように思うだけで我が身を振り返らない私は心底ダメ人間だ。