『カブキブ!1.2』

カブキブ! 1 (角川文庫)

カブキブ! 1 (角川文庫)

カブキブ!  2 (角川文庫)

カブキブ! 2 (角川文庫)

祖父の影響で歌舞伎を愛するようになった男子が高校入学を機にカブキ同好会を作り部員集めに奔走しライバル部と戦い目標は文化祭での公演・・・とこの種の作品テンプレ通りではあるものの、歌舞伎を題材にした漫画がドラマ化されたこともそうだけど、ついに学園モノで「歌舞伎」ネタが来たかーってのは一歌舞伎ファンとして嬉しく思います。
ただ目新しさのために歌舞伎を持ち出しただけで中身はただの学園モノってな感じになるかと思いきや、「歌舞伎ってちゃんと見たら面白いよ」「言葉は難しいかもしれないけど現代に置き換えてみれば話自体は全然難しくないよ」という啓蒙といったら大げさですが歌舞伎の魅力を伝えようという想いが感じられるし、作中で歌舞伎を知らない、歌舞伎なんてものに興味ゼロの女子たちに「ミュージカルの方が面白い」と言わせ、そういう人たちをいかに楽しませるか、歌舞伎の面白さを解ってもらえるか、そう主人公に思い悩ませたりもして、そういうところはとても好感が持てます。でもこれまた作中で登場人物に言わせてるけど現実的にみて「敷居が高い」のは事実なんだよね。そしてその敷居を少しでも低くして新しいファン(若いファン)を獲得する努力をしてるとは到底言えないこともまた事実。だから果たしてこれを読んだ若い人がどのぐらい実際に歌舞伎を見てくれるのかは疑問なんだよねぇ。
・・・なんてことを読みながら考えてしまうぐらい、ちゃんと歌舞伎という古典芸能に向き合って描かれている作品であることに驚きました。
だからまぁ読み物として面白いかと言うと正直微妙かなぁ・・・という気はします。子犬みたいな目の小っちゃい男子だけどその言葉には人を動かす力がある熱血主人公にその親友のクールで眼鏡の天才プログラマー、宝塚のごとき演劇部のスター、180オーバーだけどオネエな日本舞踊の家元の息子、その道では神とされるコスプレ衣装作りの名手とその設定こそ漫画チックなもののタイトルから想像するほど軽くないし、歌舞伎というもののイメージが全くわかない人にとっては例えば2巻の読みどころである演劇部との外郎売バトルとか何がどう難しいのか、演劇部とカブキブがやってることの何がどう違うのか、そこいらへんを想像するのは難しいだろうなーと。まぁこれは歌舞伎に限らず演劇を題材にした作品なんかでもそうだと思うんだけど、実際に見て聞いてしたことがないとどれだけ劇中でその面白さや魅力が描かれていても想像に限界があるんだよね。だからこそちょっとでも興味が湧いたならば歌舞伎を一度見てみて!って話になるんだけど、若い人が気軽に見られるような現状じゃないんだよなぁ・・・というループ。
ものすごくいいところで終わってる(次巻へ続く)んで、早く続きが読みたい。