長岡 弘樹『教場』

教場

教場

警察学校を舞台に章ごとに異なる生徒の視点でそれぞれが抱える事情や人間関係が描かれ、教習期間途中で着任した洞察力に優れる担任が各章でキーパーソンとなる連作短編集です。
警察学校という特殊な環境を最大限に活かしつつも、その中で描かれていることはそんな特殊な環境ではなくともどこででも誰にでもあるようなことなんですよね。描かれてるのは『人間』なんです。
以前読んだ作品もそうでしたが、この人間の描き方が本当に上手い。作者と登場人物の距離感・・・って変な言い方だけど、うーんなんて言えばいいのかなぁ・・・? 作品から感じられる書き手の感情というか思い入れというか、その見え方が程よいので読みやすい。人間を描くということはイコール人情を描くということになるわけですが、どちらかといえばドライなタッチで描いているのでいい意味で冷静に読めるんですよね。このバランス感はとても好み。
ちょっといい話もあれば苦い後味の話もあるので1篇ごとの印象は異なるんだけど、キーパーソンの存在がピりっと効いてるので全体の印象は統一されていて、1作ごと単品として堪能しながらもこれらの物語は最終的にどう集約されるのだろうか?という興味を抱かされ、それが最後まで持続する。いやぁ・・・上手いわ。