友井 羊『ボランティアバスで行こう』

ボランティアバスで行こう!

ボランティアバスで行こう!

第10回このミス対象優秀賞を受賞された作家さんで、受賞作はわんこを殺した犯人として息子が父親を訴える・・・という話らしいのですがわんこの話は問答無用で泣く私なので即スルーいたしまして、なので今作がはじめましてです。
作中でそうとはっきり明言されているわけではないものの、東日本大震災を想起させる震災が起こり、就職活動に有利にすべく大学生が企画した被災地へのボランティアバスに参加した人々のそれぞれの事情を描いた短編集なのですが、これ連作短編集と言っていいのかなぁ?。時系列に仕掛けがあるので連作っぽい短編集という感じ。
で、この仕掛けに私途中まで全く気付いてなくって、それが解った瞬間の「そういうことかー!」は結構な衝撃でした。それほどあの震災を描いた(作中でそれが描かれている)作品を読んでいるわけではないのですが、私が読んだ限りでは震災を・・・言い方悪くて傷ついてしまう方もいるかもしれませんが、『過去』として描いた作品ってさすがにまだなくて、そこに一番驚いた。そういう描き方しちゃうかーって。
でも作中でも言及されていますが「ボランティア」という制度でいいのかな? それが定着したのって阪神・淡路大震災以降のことなわけで、震災という大きな悲劇から産みだされた前向きで確かな『成果』なわけですよね。だから今回の震災からもきっとそういう何かが産まれる。制度とかそういうものでなくとも気持ちはきっと次に繋がる。そういう想いが詰まっているので、私は嫌な感じはしませんでした。
まだこの1冊だけなので判断はできませんが、こういう物語を書く人ならば他の作品も読んでみたい。でもわんこは無理なんだけど><。