輪渡 颯介『蔵盗み 古道具屋 皆塵堂』

蔵盗み 古道具屋 皆塵堂

蔵盗み 古道具屋 皆塵堂

このシリーズほんと面白いなぁ。人死が関わってはいるものの描かれていることは云わば日常の謎の江戸バージョンなんだけど、“曰くつきの品物”に端を発する物語の展開が颯爽としてるんだよね。そしてその日常の謎を描いた各話が最終的に毎回異なる主人公(視点となる人物)の人生を描く物語として集約される。それはもう気持ちいいまでの見事さで、その様は美しいというよりも端正と表現するのが相応しい感じ。シリーズ3作目にあたるんだけど、各話にさりげなく散りばめられた伏線を最終話できっちりと回収し、そこに驚きと爽快感(カタルシス)がしっかりとある今作は現時点での最高傑作と言えると思う。
収録されてる1篇はメフィストに掲載されたものでそれ以外は書き下ろしとのことですが、当然その収録作が“元ネタ”ということになるのでしょうがそれをここまでしっかりとした連作集にするってどういう仕組み・・・と言ったらヘンだけど(笑)、例えばあらかじめ大まかな筋を決めておいてからその中の鍵となる1篇をまず書いてから必要な伏線を織り込みつつ放射状のように広げていく感じなのか、それとも1篇書いたらそれに紐付くようにして次の1篇また次の1篇と展開していくのか、どうやってこれだけ見事なものに仕上げてるんだろうなぁ。