宮部 みゆき『ソロモンの偽証 第1部 事件 』

ソロモンの偽証 第I部 事件

ソロモンの偽証 第I部 事件

物語の出発点というか引き金というか、最初に起きた出来事は唯一の当事者たる生徒の内面が一切描かれないのでその“真相”については分からないものの、まるで半紙に零れた墨汁がじわじわと広がっていくようにそこから派生したその後のあれこれについては読者視点ではなにがどうなっているのか明らかなわけで、この話が3部作になるほどどう膨らみ最終的にどう畳まれるのか全く予想がつきません。
相当な人数が登場する群像劇で、登場人物たちは変人だったりお金持ちだったり変な口癖や特殊な嗜好の持ち主だったりといった“設定”があるわけではない普通の人々なのですが、それなのに一人一人の読み分けができるというか、この人はこういう感じの人間なんだなってことが読み進めるうちに自然と蓄積されていくんですよね。だから登場人数のわりに流れ的には整然としてる。当然この先この人々がそれぞれの正義それぞれの思惑それぞれの事情の元行動を起こしていくのでしょうが、これだけしっかりと土台を作ってくれれば心情面の理解がしやすいだろう。やっぱすげーな、宮部みゆき