貫井 徳朗『微笑む人』

微笑む人

微笑む人

妻子を殺した男に興味を抱いた小説家がその男について描くべく独自に調査を行う物語で、たどり着いた人々の「男についての話」が様々な形で報告されるというスタイルなのですが、貫井さんにしては(よくも悪くも)読みやすいし物語の“主役”である男もなかなかにミステリアスだとは思うものの、なんていうか・・・・・・熱量が足りない、かなぁ。
調査が進むにつれ小説家の中でゆっくりとではありますが男像が形作られ肉が付き、やがて自分が理解・納得できる“原点”に辿りつくわけですが、そこに熱量というか、男のことを“知りたい”と思わせるだけの引力がないかなーと思った。
そのせいか、ラストのキレも甘いように感じた。罪を暴き裁くための「真実」ではなく、小説家=全く関係のない第三者が犯人が語る不可解な動機を自分なりに理解するための「真実」を求める話なので狙いとしての曖昧さであることはわかるんだけど、それ以前に甘いなと。