五條 瑛『塔の下』

塔の下

塔の下

タイトルの「塔」ってのはスカイツリーのことで、その周辺をシマにしている裏社会の人間たちの物語です。
この建造物によって変わることを強いられているであろう下町を舞台にしたのは、法律や外国人勢力によってこれまた変わっていかざるをえない裏社会をそこはかとなくシンクロさせているからなのかなーなんて思ったわけですが、内容的にはよくも悪くも何のひねりもないストレートなヤクザ話。
でも生粋のヤクザ者ではなく知的職業についていながらバカな理由でそこからドロップアウトしたところをイケイケの男に拾われヤクザ社会の一員となった“ヤクザっぽくない男”を主人公にしたあたりに五條さんっぽさが出てる。主人公の周囲の人間もタイプは違えどみんな“賢い人間”で、でも社会的には“真っ当”ではない。五條さんのそのバランス感覚というか距離感が私はとても好き。
そしてそんな主人公が仕事ではなく私的な感情で動く理由である年下の友人。主人公が“こいつのために”どうにかしてやりたいと思うその青年がまさに五條キャラでウハウハです。