桜庭 一樹『ブルースカイ』

ブルースカイ (文春文庫)

ブルースカイ (文春文庫)

読みながらこれは桜庭さんによる「時をかける少女」なんじゃないかなーと思っていたのですが、佐々木敦さんが巻末の解説でまさにそう言及されていて、すごく腑に落ちた感じ(笑)。
異なる時空で紡がれる3つの物語を一つひとつ読み進めるうちにこれがどういう物語であるのかどんどん判ってくる感覚にワクワクしつつ、1人の少女が中世ヨーロッパで幼い少女に出会い、近未来のシンガポールで“少女性”に代わるメンタリティの持ち主である青年に出会い、そして少女自身の悲惨だけど爽快な物語として結実する流れに酔いしれました。“その瞬間繋がってた人たち”ってのはなんかすごく納得のいく設定だったし。
少女は少女の意思とは全く関係なく、云わば偶然という名の強制でもって幼い少女と青年と出会い「繋がり」を持つが、同じようにしてその関係を断たれる。少女に抗う術はないし、抗う力もない。それはまるで『少女という生き物』そのもの、なんじゃないかなぁ・・・なんて思った。
子供でいたくてもいられない。少女でい続けたくてもいられない。だからこそ少女はその時間を傲慢なままに貪りつくそうとする。そして一分一秒でも長く少女であるために戦おうとする。そういうことなのかなぁなんて。