平山 瑞穂『出ヤマト記』

出ヤマト記

出ヤマト記

帯に
『世代を超えた悲劇と希望を描く、
幻想的ビルドゥングスロマン
とありまして、書店で「びるどぅんぐすろまん・・・?」とポカン状態に陥ってしまったわけですが、調べたら「教養小説」という意味で、もうちょっと解釈を拡げると“主人公が自己形成する過程を描いた成長物語”をそう称するそうです。おう・・・この歳になって初めて知ったぜ。
日本にいられなくなり見ず知らずの祖父が父に宛てた1通の手紙を頼りに「ヘブン」を目指し海を渡った少女の物語と、“祖国”のために生きた男の独白(回想)が交互に描かれる形なのですが、劇中でははっきり名称こそ出ないもののヘブンがある祖国は“あの国家”なわけで、さすがに未成年の少女が単身密入国するのは(設定として)無茶だろうと思いつつも、ヘブンへ向う旅の中で自分の中に流れる血と、自分が生きる日本という国の豊かさであり醜さであり、そういうものを改めて知り、自覚しつつ、最終的に少女は全てのものに感謝し、一方で男の回想によってあの国がしてきたことの一端を見ることができるこれはまさにビルドゥングスロマンだなと。
ええ、「ビルドゥングスロマン」が使いたかっただけです(笑)。