遠藤 武文『炎上 警察庁情報分析支援第二室』

炎上 警視庁情報分析支援第二室〈裏店〉

炎上 警視庁情報分析支援第二室〈裏店〉

観察力・推理力に長けた変人天才警察キャリアが事件の真相をズバっと見抜くというよくあるパターンなのですが、この作者がこういうタッチの作品を書いたことにちょっと驚いた。
そして タイトルにあるように“裏店”と呼ばれる部署に所属していながらもその部署が最初の1編以外は作中で全く活かされていないことにも驚いた(笑)。迷宮入りした事件資料なんて微塵も登場しない出来たてホカホカの事件取り扱っちゃってますからね(笑)。
トリック作りは得意な人だと思うんで、この作品に見合うものが浮かべばいくらでもシリーズ化できそうな感じではありますが、それにしては主人公の変人キャリアにシリーズ通して描くべき“何か”が全くないっぽいのがちょっと気になる。あとやっぱり謎解き以外のパートではワトソン役(ツッコミ役)がいたほうが読み物として読みやすいってのはどうしてもあるんで、それは早急に出したほうがいいかなーとは思うものの、でもこの我孫子警視正という変人は「ぼっち」であることに意味があるような気もするんだよなぁ。


我孫子警視正の傍若無人っぷりを読みながら現在放送中のリーガル・ハイというドラマの主人公が思い浮かんだのですが、別に両者を比較してどうこうというのではなく、純粋に文字で変人を描くってやっぱり難しいんだろうなぁと思った。微妙な表情や動き(ポーズとか)って文字で表現するのは限界があるじゃないですか。同じ変人を描いたとしても、それが見えるのと見えないのとじゃ印象は結構違ってくると思うわけで、だからこそそれが小説を映像化した際に「イメージと違う」理由に繋がるわけなんだけど、この作品の主人公は“変人だけど憎めない”キャラを目指しているのか、それとも“愛され度ゼロ”を目指しているのか、どっちなのかなー。